卒業論文アーカイブ

雑穀を用いた郷土料理の存続要因―岩手県県北地域を事例としてー

  • 年度
  • 平成29年度
  • 氏名
  • 小松 亜沙月
  • 指導教員
  • 渡辺
  • キーワード
  • 食文化・農村文化
  • 概要
  • 近年、流通機構やマスコミュニケーション等の影響により食形態の均一化が進行し、食文化の地 域色が薄れつつある中、栄養バランスの良い和食は健康ブームの高まりなどにより再評価されてい る。こうした動きの中で地域の郷土料理への関心が高まっている。そこで本研究は雑穀を用いた岩 手県県北地域の郷土料理を対象に、現在の状況を踏まえその存続の要因を分析し、郷土料理が衰退 しないための足掛かりを探りたい。 調査内容は2017 年9 月から11 月にJA 新岩手、二戸農業改良普及センター、雑穀農家への聞き 取り調査に加え、県北地域の産直3 か所で42 人に聞き取り調査を行った。 その結果、二戸市、軽米町、九戸村、一戸町での雑穀生産の収穫量は320 ㎏(H20)から138 ㎏(H25) に減少しているが、国産雑穀の需要の高まりにより近年は回復傾向にある。調査した14 種の郷土料 理の中で80%以上の回答者が「作る」と答えた料理は比較的調理に手間がかからない2 種(ひっつ みと煮しめ)であり、残る12 種の回答はいずれも35%以下であった。ただし、作らなくなった郷 土料理は産直等でその惣菜を購入するという。惣菜は郷土料理伝承者である「食の匠」の調理が多 かった。すなわち14 種の郷土料理は「作る」郷土料理と「買う」郷土料理に二極化していた。また 二戸市周辺の産直の多くで雑穀の販売があり、郷土料理の惣菜は10 か所中5 か所で販売されていた。 以上から雑穀を用いた郷土料理(14 種)は現在も食する環境にあり、存続していると判断された。 その背景には雑穀生産の復活と郷土料理伝承者の役割が大きい。しかし課題として「食の匠」など の伝承者や同様の組織では高齢化が進み、世代交代の必要性が高まっている。そのため、郷土料理 を伝承できる新たな世代の育成が必要である。

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