卒業論文アーカイブ

農業経営の観点からみた日本におけるCSA実態調査―なないろ畑株式会社を事例に―

  • 年度
  • 平成25年度
  • 氏名
  • 飯室 美穂
  • 指導教員
  • 藤科
  • キーワード
  • 農業法人
  • 概要
  • Community Supported Agriculture (CSA;地域支援型農業)は「会員(消費者)が農産物の代金を前払いすることにより生産のリスクと成果を生産者と共有し支え合うシステム」であり、アメリカで注目されている。導入される一要因に、会員から経済的支援を生産者が受けられることが挙げられ、日本でも導入され始めている。しかし、アメリカでは収入不足や会員・需要不足によりCSAを辞める農家もでてきている。本研究では、神奈川県のなないろ畑株式会社を事例として、CSAの経済的支援が発揮されているかを調査し、コミュニティ・ファーム型CSA(CSAの中でも特に経済的支援が受けられる)を運営する上で重要となるポイントを提示した。まず、経営分析から、経営状況は良好ではなく、売上高の増大、または経費(雇用費)の削減が必要であることを明らかにした。次に、売上高の増大に関わる経済的支援の試算から、損益分岐点売上高を会費のみで得るためには、会費額を現在の2倍に設定、または現在の1.8~2倍の会員が必要となることを明らかにし、雇用費の削減に関わる経済的支援の試算からは、コア・メンバー(作業に参加する会員)が現在の3倍以上必要であることを明らかにした。以上のことから、なないろ畑株式会社の経営状況は不安定で、経済的支援が不十分であるといえ、コミュニティ・ファーム型CSAを運営する上で重要となるポイントとして、 (1)事業規模に見合った会員数、経費などの目安を把握する、(2)適正な会員数を確保するための魅力や宣伝活動を行う、(3)コア・メンバーの作業分担の適正化と人数の確保、を挙げた。これらのポイントを踏まえることで、充分な経済的支援を得て、コミュニティ・ファーム型CSAは持続的な運営が可能となると考える。CSAは健全な経営の元では日本でも実現可能であり、CSAの仕組みがより多くの農家に広まるには、経営者の経営分析能力が問われるだろう。

論文アーカイブ検索に戻る