福島第一原発事故による放射能汚染に対する行政の対応と会津産米の流通について
- 年度
- 平成24年度
- 氏名
- 古内 哲兵
- 指導教員
- 保木本
- キーワード
- 食の安全・安心
- 概要
- 福島第一原発の爆発事故により、大気中に大量の放射性物質が放出され、福島県産の農作物は深刻なダメージを受けた。そこで本研究では、調査対象を米に絞り、放射能汚染に対する行政の対策によって、生産者・消費者がどのような被害を受けたかという因果関係を調べ、最終的に行政が行う対策の問題点の本質を突き止めることを目的とした。まず、行政による23年度の対策は作付け制限の範囲・検査体制は、最悪の事態を想定したと言うには程遠いものだった。その理由として、今回の事故が過去に例のないもので、被害の拡散を予想する術を持っておらず、不十分なリスクマネジメントだったためだろう。その結果、福島県産米に対する信頼が低下し、放射能汚染の直接被害を受けていない会津産米において、取引価格の低下、取引数量の遅れという問題が発生し、生産者は大きな打撃を受け、また、汚染米が流通している可能性が高いため、消費者も大きな被害を受けた。次に、24年度の対策は、前年度のデータを踏まえて行われ、検査体制も整備されたことにより、価格などは事故前と同等になり、消費者は安心を取り戻したように思われるが、安全性が確保されたとは言い難い体制が続いているというのが現状である。今回の研究で、中枢である行政の対策が、最悪の事態を想定していない、言い換えれば当たり障りのないものであったがゆえに発生した問題の責任を、末端である生産者・消費者が押し付けられているという実態が明らかになった。今後の展望として、中枢は第三者のような立場でなく、自らが率先して責任を負うという状況を作り出さなければならない。