卒業論文アーカイブ

獣害対策における、住民意欲喚起の土台づくりの重要性〜米沢市のサル被害対策を事例に〜

  • 年度
  • 平成28年度
  • 氏名
  • 片山 友樹
  • 指導教員
  • 保木本
  • キーワード
  • 中山間地域問題
  • 概要
  • 近年、鳥獣被害が中山間地域などにおいて深刻な問題となっている。鳥獣被害対策では、数戸の 個別農家が点的対策を行っても地域全体としての被害軽減効果は低く、地域の被害軽減を行うため には面的対策を行うことが必要となる。また、家庭の生ごみや放任果樹などの野生動物を誘引する 要因を取り除く集落周辺の環境整備も必要である。つまり、直接の被害農家だけではなく地域が一 丸となって継続的な取り組みを行わなければならない。しかし、獣害発生原因への専門的知識の欠 如に加え、近年の集落機能や地域の団結力の低下、さらに住民の地域の環境維持への意欲の低下が あり、地域一丸での取り組みは全国的に十分に実行出来ていない現状がある。そこで、実効性ある 鳥獣被害対策には地域自治体など挙げての住民意欲喚起の土台づくりが必要なのである。本研究で は、こうした獣害対策の実態をより詳しく検討すべく、山形県米沢市を対象として調査を行った。 米沢市の場合鳥獣被害は、主にサルが原因である。調査では、対策を担当している市職員や実施隊 員などからの詳しい聞き取りを行った。調査の結果、米沢市のサル被害は発生から20 年近く経つが、 長年、実効性ある被害対策がなされなかったことがわかった。その最大の要因は、サル被害の当事 者である農家の獣害対策に対する意欲や専門知識が欠けているためであることが確認された。また、 平成27 年頃から米沢市は住民意欲喚起の土台作りを目的として米沢市山上地区で集中的に獣害対 策に関する取り組みを行っていることもわかり、山上地区でも詳しい調査を行った。その結果、そ の取り組みは行政が積極的に専門家を含めて集落環境を見直したことや地区外の人の協力を得たこ とを要因とし土台作りが成功したと考えられる。それをもとに取り組みが地区内及び他地区に広が っていこうとしており、さらに継続的な取り組みも行われようとしていることが確認された。

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