卒業論文アーカイブ

日本農業における技術進歩の現状と変動要因の分析 1980-2013年の全要素生産性把握を通して

  • 年度
  • 平成27年度
  • 氏名
  • 細川 裕司
  • 指導教員
  • 小沢
  • キーワード
  • 農業技術
  • 概要
  • 日本農業を対象にした技術進歩の計測は重要である。なぜならば、耕作放棄地の増加、労働人口の減少といった生産要素の減少がみられるなかで、技術進歩で日本農業の食料生産力を維持させることが可能と思われるためである。技術進歩は全要素生産性(以下、TFP)の向上と一致すると考えられている。TFPを変動させる要因を把握し、技術進歩が効率的に行えるように図ることは日本農業の食料生産力を維持するためには重要である。日本農業を対象にTFPを計測し、技術進歩が行われる過程を検証した先行研究で注目したのが胡(1995)によるものである。胡(1995)では1960~90年のTFPを計測し、農業交易条件、農業予算の変化、農協組織要因、減反要因、農業経営の技術的安定性、規模要因を技術進歩の変動要因とし、その整合性を示した。また、本研究でもこれら指標を用いて技術進歩の過程の整合性を見直した。結果は農業交易条件と農協組織要因がTFP変動の説明変数として当てはまらなかった。理由として、国際化により農業交易条件はTFPへの影響が弱くなったこと、農協合併により農協組織要因はTFPへの影響力が弱まったことが考えられる。TFPの変動傾向は継続的に上昇し、規模の経済が働いているとともに、TFPの小規模優位(0.5ha未満でTFPが高い値)も働いていることが分かった。考察において、小規模優位が起きるのは畜産農家の貢献によるものとの示唆が得られた。また、大規模優位(2.0ha以上)が見られるのは稲作と畜産によるものとの示唆も得られた。今後の課題として、統計資料の充実、例えば規模別集計経営体数の分布が異常値を示すため、改善させる必要性がある。また、技術進歩の変動要因として新たに農業の競争度を考慮した指数の作成を行う必要性がある。

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