卒業論文アーカイブ

市民風車の事業採算性に関する実証的考察

  • 年度
  • 平成23年度
  • 氏名
  • 増田 綾奈
  • 指導教員
  • 家串
  • キーワード
  • 自然エネルギー
  • 概要
  • 太陽光や風力などの新エネルギーの需要が近年ますます増加している中、風力発電業界では市民が環境運動等の意図を持って出資し建設する市民風車が注目を浴びている。本論文では既設の市民風車の建設費や売電量等とその市民風車ファンドの出資から分配までのキャッシュフローをモデルとして、まず現行の売電契約内容において風力発電建設補助金制度の停止が今後新たに建設され得る市民風車の事業採算性にどのように作用するかを検証した。次に平成24年から施行される「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」による全量買取制度がどのような影響を与えるかを検証した。検証は風力発電事業者の売電量や経費を一定と仮定し事業収入から経費を差し引いた①営業利益と、風車建設に使用された②市民ファンドやその他の融資の貸付金と利息の和を比較して行う。検証対象の市民風車ファンドは5基の市民風車の建設費用を募集したである。現在全量買取制度は「売電価格・売電期間」が15円・15年、20円・15年、15円・20年、20円・20年という設定で試算されているため、本論文における試算もそれに則って行った。まず現行の売電契約内容における風力発電建設補助金制度停止後の場合、②に占める①の割合は50~80%という結果となった。次に全量買取制度での15円・15年の場合95~161%、20円・15年の場合155~227%、15円・20年の場合132~200%、20円・20年の場合193~284%という結果となった。結果から現行の売電契約内容のまま補助金制度が停止した場合、風力発電事業は採算が取れなくなり、市民ファンドの分配どころか元本返済すら危うくなりうることが分かった。しかし、全量買取制度が試算の数値の範囲で施行されることとなった場合、最大で2倍程度の利益の分配が期待されることが分かった。

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