卒業論文アーカイブ

地熱発電所建設における合意形成―秋田県湯沢市小安地域を事例に―

  • 年度
  • 平成25年度
  • 氏名
  • 五十嵐 正起
  • 指導教員
  • 家串
  • キーワード
  • 自然エネルギー
  • 概要
  • 地熱発電は再生可能エネルギーの一種であり、近年の固定価格買い取り制度導入による事業採算性の向上に加えて、自然公園法改正による土地利用制限の緩和、原子力発電に替わるベース電源の確保といった観点から、その導入拡大が期待されている。しかし、その発電所の建設過程において、事業者と住民との間に合意形成に係る情報の非対称性が生じている。そこで本論文では、2012年3月の自然公園法改正後、最も建設段階の進んでいる秋田県湯沢市小安地域を研究対象地とし、原科幸彦提唱の「市民参加の5段階」を基に、発電事業者が地域住民向けに開いた説明会の内容の評価を試みた。仮説には「A:両者の議論において情報量の差(情報の非対称性)が埋まらずに合意が図られていく」、「B:試掘受け入れが事実上の建設合意」の2つを挙げた。分析の結果、仮説Aにおいて情報の非対称性を含んだまま議論が進んでいる事実があった。それは、1500~2000m規模の坑井掘削において発電可能性調査を行う関係から事後報告的な側面は否めず、発電開始前後も継続的なモニタリングが必要との解釈が両者にあったためである。また同Bにおいては住民側に事業中止条件の提示はあるものの、噴出量予測の難しい自然湧出水への影響であること、熱水染色調査等から湯元が掘削対象の貯留層とは別であることとの事業者側からの現在の判断によって事実上の容認という姿勢であった。地質調査後の住民説明が基本となる地熱発電所建設においては情報の非対称性改善の観点から定期的で継続的な情報開示が特に事業者に求められる。一方、住民においては発電所建設の事実上の同意が住民説明会の比較的初期の段階で行われること、合意形成を含めた建設期間が長期になることを踏まえ、早期での状況把握、多世代での説明会参加等の対策をとることが望ましい。

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