卒業論文アーカイブ

在来作物の生産実態と消費拡大に向けた課題―最上伝承野菜「畑なす」を事例に―

  • 年度
  • 平成28年度
  • 氏名
  • 伊藤 宣哉
  • 指導教員
  • 渡辺
  • キーワード
  • 地域ブランド
  • 概要
  • 本研究は山形県最上地方の「最上伝承野菜」の1 つ、「畑なす」を取り上げ、その生産と流通の実 態を明らかにした上で、消費拡大に向けた課題を提示することを目的とする。「畑なす」は1970 年 頃までは新庄市内への販売用として生産されていたが、その後は2010 年頃まで自家用としてのみ栽 培されていた。しかし近年、行政の支援もあり、販売拡大に力を入れている。 現在、「畑なす」生産者7 世帯で、「畑なす生産者の会」が組織されている。同会の平均年齢は69.6 歳である。生産はすべて露地栽培で行われている。ただし畑集落は最上川の蛇行帯に位置する洪水 常襲地帯であり、浸水により「畑なす」の流出を避けるため、栽培は集落内の微高地で行われてい る。「畑なす」生産量は、2010 年から2013 年までは0.3~0.4t であったが、2015 年より株式会社も がみ物産協会が、「畑なす」の全量買い取りを進めたこともあり、同年には1.2t へ増加した。もが み物産協会に集荷された「畑なす」は、山形県内外の飲食店や青果店、新庄市内の学校給食への卸 売りや店頭にて販売されている。以上のような生産と流通実態を踏まえて、本研究では主に4 点の 課題を提示する。1 点目は生産者の高齢化についてであり、作業負担の軽減、後継者の確保が課題 となっている。2 点目は「畑なす」の品質の確保に関する点である。「畑なす」栽培と、他品種のナ スとの栽培地が近いため、純粋な種の確保に懸念がある。3 点目は生産地の確保に関する点である。 現状では、「畑なす」栽培地は畑集落に限られ、今度、生産拡大を図るためには、新たな生産者の獲 得も視野に入れることになろう。4 点目は、他品種ナスとの差別化についてである。形質や用途の 違いといた「畑なす」独自の特徴を広く伝えることが有効となろう。「畑なす」の継承には、その価 値がより広く認知され、関係者の連携と支援が必要不可欠であると考えられる。

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