卒業論文アーカイブ

介護離職動向の分析を通じた介護問題深刻化の背景の考察

  • 年度
  • 平成28年度
  • 氏名
  • 伊東 郁哉
  • 指導教員
  • 保木本
  • キーワード
  • 地域コミュニティ
  • 概要
  • 介護問題が全国的に深刻な状況にある。本研究では、介護を理由とした離職、「介護離職」に着目 し、この問題を戦後の家族構造の変化と関連づけて考察した。分析方法として、各種政府統計資料 を用い、介護離職の全国動向を整理、府県別統計を用いて家族構造の地域差と介護離職動向の関連 性を検討した。企業側への調査である「雇用動向調査」をみると、男女とも介護・看護理由での離 職者数は増加しており、その数はH12 年3 万8 千人がH25 年には9 万4 千人へ拡大した。今日の介 護問題の深刻化の背景には、高度経済成長期に起きた、農家中心の社会からサラリーマン中心の社 会に移行した社会構造の変化があるといわれる。その社会構造の変化の中で、近代家族と呼ばれる 核家族形態が都市部を中心に拡大した。今日の介護問題の深刻化は、高度経済成長期に生みだされ たこの核家族形態の歪みの顕在化と捉えることができるのである。そこで、家族構造の違いと介護 離職率の関連性についてさらなる検討を行った。その結果、介護離職率には大きな地域差が存在す ること、またその地域差は、東日本と西日本の別、都市部とそれ以外の別、さらに、地域の三世代 同居率と関係性があることが示唆された。介護離職率増加の背景には、核家族の増加による他者か らのサポートの希薄化があると考えられる。しかし、3 世代同居など大人数世帯では家族間でサポ ートを得ることが相対的に容易であるため、仕事と介護の両立が相対的に容易なのではないかと考 えられた。このたびの研究では、近代の急激な家族構造の変化が社会に与えた影響という観点から、 介護問題の背景を検討したが、その詳しいメカニズムについては、聞き取り調査を含めた現場での 実態調査が不可欠である。その点が、今後の研究を進める上での課題である。

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