卒業論文アーカイブ

中山間地域における棚田保全活動の仕組みとその効果―山形県朝日町能中地区を対象として―

  • 年度
  • 平成24年度
  • 氏名
  • 高橋 悠
  • 指導教員
  • 渡辺
  • キーワード
  • 中山間地域問題
  • 概要
  • 1990年代以降、棚田は日本人が郷愁を感じる景観として、あるいは国土保全等の多面的機能を持つ場として、人々の関心を引き評価が高まっている。一方で、棚田が分布する中山間地域では傾斜のきつい土地柄や農家の高齢化、過疎化、担い手不足の影響で耕作放棄地の発生が相次いでいる。本研究では、問題発生を機に取り組まれた棚田保全活動について、地区民と保全参加者、行政らがどのような役割を果たし棚田保全を行なっているかを明らかにし、棚田保全活動による効果を検討する。朝日町能中地区の椹平の棚田での保全活動の実態を把握するために保全団体の代表者と地区民に保全方法を指導した行政関係者に聞き取り調査、保全への住民意識と効果を把握するために地区の農家と保全活動参加者に対してアンケート調査を行なった。椹平の棚田は平成11年に日本の棚田百選、平成18年には山形県の棚田20選に選定される等、地域外から高い評価を得た。これにより地域内でも保全の意識が高まり、「椹平棚田保全隊」という保全活動が平成18年に始まった。参加者は6年間で延べ131人に達し、年間8回の作業を行なっている。主に山形市や町内からの参加者が多く、参加理由は棚田の保全が多数であった。こうした活動が進むにつれ、椹平の棚田には首都圏からの観光客も年々増えている。平成22年には496人の観光客がバスによって見学に訪れている。さらに、椹平で収穫された棚田米は全量直販され、農協に卸すよりも高値で取引されている。こうした棚田をめぐる変化に地区民は町への観光客の増加や関心の高まりを良く感じており、今後の棚田保全に積極的な姿勢を見せていた。椹平の棚田をめぐっては、初め、地域外からの評価が先行したが、現在は地区民が中心となり、保全活動を展開し棚田景観の維持につながっている。

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