卒業論文アーカイブ

世代飛ばしの農業継承について―秋田市仁井田地区の歴史と現状を例に―

  • 年度
  • 平成26年度
  • 氏名
  • 戸島 皓右
  • 指導教員
  • 保木本
  • キーワード
  • 農業後継者
  • 概要
  • 農業は今まで親から子へ、子から孫へと土地や技術が受け継がれ続いてきた職業である。しかし、いま農業の分野では世代交代が上手くいかず、高齢者が農業を続けざるをえない、後継者不足、農業の高齢化が大きな問題となり、世代のバトンが途切れようとしている。本研究では世代間のバトンの継承という観点に着目し、この視点から地域農業の変貌の経緯と課題について考察を行った。調査事例として取り上げたのは自分にとって身近で、かつ秋田県の稲作が直面した時代変貌に翻弄された地域でもある秋田市仁井田地区である。仁井田地区は江戸時代から続く秋田県有数の穀倉地帯であり、1960年代に秋田県の農業近代化の拠点として秋田農業大学園や県立農業試験場も設置され、水田の圃場整備も全国に先駆け取り組まれた地域である。しかし、今日、この地域でもバトンが手渡せない事態が発生している。本稿の前段ではその所以を聞き取り調査によって探り、親世代が農業に向かっていった時代に同時平行的に生じた高度経済成長下の地域変貌の経緯を確認した。子世代が就業選択をする時代には稲作の機械化により稲作労働力の必要性は大幅に縮小し、他産業との所得格差、激しい農業バッシングなどで農家の子供が他産業に流れるやむを得ない時代背景があった。しかし、農業の高齢化と後継者不足の問題は迫ってきており、誰かが農業のバトンを受け取らなければならない。そこで考えられるのが親世代から孫世代への農業継承である。本稿後段ではこの世代飛ばしの農業継承の必要性と重要性を、聞き取り調査内容を踏まえ明らかにした。孫世代への農業継承が持つ最大の意義は、農地賃貸借円滑化の鍵となる、地域の人間関係の継承が可能な点である。一方、兼業構造のもと自己完結型農家が多数の当地域では、過去のしがらみに囚われない挑戦も重要で、その観点からもリタイア世代就農より孫世代就農の意義はきわめて大きい。

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