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グリーン電力証書取引の実態と今後の展望(修士論文)

  • 年度
  • 平成26年度
  • 氏名
  • 高田 矩行
  • 指導教員
  • 家串
  • キーワード
  • 自然エネルギー
  • 概要
  • 近年、再生可能エネルギーによる発電が低炭素社会の創出、エネルギー安全保障のための供給源の多様化、関連産業の創出、雇用拡大などの観点から大きな注目を集めている。しかしながら、再生可能エネルギーには、従来の化石燃料や原子力による発電に比べて発電コストが高いなどの問題が存在する。そのため今日まで再生可能エネルギーには普及拡大のための様々な公的補助政策が取られてきた。一方で、民間主導による再生可能エネルギー推進活動も行われてきた。その一つがグリーン電力証書取引である。グリーン電力証書取引とは、再生可能エネルギーの持つ電力と環境価値を切り離し、その環境価値部分を売買する仕組みである。この仕組みによって、再生可能エネルギー発電施設は環境価値の販売を通じて収入を得ることができ、環境価値購入者は再生可能エネルギーの環境価値を利用することが可能となる。グリーン電力証書は、その仕組み上、固定価格買取制度(Feed-in Tariff、以下FIT と略す)と併用することはできない。FIT とは、今日、日本の再生可能エネルギーの普及拡大を図る主たる政策であり、電力事業者に対して再生可能エネルギーで作った電気を高価格で長期間買取ることを義務づける制度である。日本は2012 年に、電気事業者に対して一定量以上の新エネルギーを利用して得られる電気の利用を義務づける利用割合基準法(Renewable Portfolio Standards、以下RPS と略す)からこのFIT への移行を図った。そこで、本研究では、2012 年のFIT 導入を基点としてその導入以前より民間の再生可能エネルギー推進活動として取り組まれてきたグリーン電力証書取引の今後の動向を明らかにすることを試みた。グリーン電力証書取引に係る先行研究は今日までほとんど見られておらず、その実態は明らかになっていないのが現状である。そのため本研究では、①今日まで日本の再生可能エネルギー普及拡大に際して、グリーン電力証書がどのような影響を与えたのか、さらに、②今後のグリーン電力証書取引の展望について明らかにした。具体的には、まずグリーン電力証書取引市場の取引記録を基にその動向分析を行った。次に、発電施設のグリーン電力証書販売とFIT、RPS との採算性の比較分析を行った。そして最後に、今後グリーン電力証書取引市場に新規参入を図る発電施設の可能性を明らかにした。本研究の分析により、グリーン電力証書取引市場の現状分析により、同市場は取引量の多い一部の証書購入者が大部分を占めていることが明らかになった。また一方で少量の証書購入者が多数いることも明らかになった。発電施設の採算性は、RPS よりもグリーン電力証書が高く、現状のFIT よりも低い。このように、採算性のみを考慮すれば、発電事業者がFIT のもとでグリーン電力証書取引が選択する可能性は低いといえる。現在のFIT の電力の買取価格の基準では、新規発電施設は参加の可能性は低いといえるのである。しかしながら、今後、FIT の対象とならない既存発電施設を有する発電事業者についてはグリーン電力証書取引参加への高いメリットがある。また一方ではFIT 自体も今後は電力の買取価格の継続的な低減が図られることが予想され、再びグリーン電力証書取引の市場規模の拡大が図られる可能性も有しているといえるのである。

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